方言 dialect

その地域で使われている言葉の全体。一般にはその地域特有の表現であり、共通語標準語)で使われない言葉を指すが、日本語学では、そうした言葉は「方言特有語・俚言」等と呼んでいる。一般語の「方言」には、「間違った、汚い、変な」といったニュアンスが伴うが、学術用語としての「方言」ではそうしたニュアンスを排除している。そうしたニュアンスを排除するためには「言語変種」という用語を使うのが良いのだが、新しい学術用語を前面に出すと、その用語の説明をしなくてはならないので、概説書等では従来の「方言」が使われる。また、地域的な変種ではなく、社会階層などの変種に対して「社会方言」という用語も使われる。なお、英語のdialectにも、日本語と同様なニュアンスがあるために「言語変種language variety」やlectという用語が使われる。
・言語と方言を言語特徴のみで規定することは難しい。オランダ語とスイスのドイツ語はその間にドイツを挟んで連続的につながっていて、明確に境界を引くことはできない。「琉球方言、沖縄方言」という呼び方は、琉球列島の言葉が日本語の枠の中に収まっているという見方(イデオロギー)を内包している用語であり、「琉球語、沖縄語」という呼び方は、日本語と拮抗する資格を持つ言語として沖縄語を理解している(理解しようとする)用語である。ヒンディー語とウルドゥ語のように、話して通じる言葉であっても別言語とする場合もあれば、広東語と北京語という互いに通じない言葉を「中国語」として括る見方もある。