文学部人間学科以外の学生で日本語教師を志望する方へ

                                                          山岡政紀

 

 日本語教師には資格試験や免許制度がないため、どの学部の学生でも日本語教師となることは制度的には可能ですが、実質的意味において日本語教師は高い専門技能が要求されますので、本格的に日本語教師を職業として目指すのであれば、文学部人間学科で異文化コミュニケーション《日本語》メジャー(以下、日本語メジャー)にメジャー登録し、特修プログラムの「日本語教育プログラム」に登録する以外に方法はありません。

但し、海外で他の職業を目指していく過程で暫定的に日本語教師を務めたいというような人のために特修プログラムの「日本語教育(基礎)プログラム」を開設しています。こちらは取得単位数を少なめに抑えていますので、文学部の他メジャー生でも修了できる副専攻のような位置づけになっています。例えば、中国語が得意で中国語メジャーに登録しながら「日本語教育(基礎)プログラム」を履修することは可能です(但し、総取得単位数がかなり多くなります)。たとえ暫定的であってもこの程度の学習はしておかないと、学習者に迷惑がかかるでしょう。

他学部生が本格的な日本語教師を目指すならば文学部に転学部する以外にありません。あるいは他学部生が暫定的な日本語教師ができる知識を得ておきたいのであれば、「日本語教育(基礎)プログラム」で示されている授業科目を自由聴講科目として履修することを強くお勧めします。その結果、文学部の他メジャー生が履修するのよりもさらに総取得単位数が多くなってしまいますが、それができないという人に別な形で何かの協力をするということはできません。

 まずは「日本語教育(基礎)プログラム」に示されている日本語教育関連科目を履修し、講義の内容を通じて基本的理解を得るようにして下さい。具体的には「日本語教育概論」「日本語教授法」など です。〈担当:蓮沼昭子、山岡政紀、守屋三千代、大塚望〉

 また、日本語メジャーの学生にも大学院進学(創大の場合、文学研究科国際言語教育専攻日本語教育専修)を勧めており、他学部他学科卒業後に大学院へ進学することも一つの選択です。その場合、他の専門の卒業論文執筆と並行して日本語教育の大学院入試準備を行うことは大変難しく、一般的には卒業後に最低一年間の大学院進学準備期間が必要となるでしょう。

〈日本語日本文学科卒業生が進学した大学院・日本語教育専攻〉

 東北大学、筑波大学、早稲田大学、東京学芸大学、杏林大学、学習院大学、名古屋大学、愛知教育大学、横浜国立大学、広島大学など

〈他学部他学科卒業生が進学した大学院・日本語教育専攻〉

 杏林大学、姫路獨協大学など

なお、2009年4月より、大学院文学研究科国際言語教育専攻日本語教育専修が開設され、その修了生は中国、メキシコ、キューバ、ラオス等、世界各国で日本語教師として活躍しています。

2003.10.14
  更新2015.11.25


日本語メジャー生、および、日本語教育プログラム・日本語教育(基礎)プログラム履修者、以外の学生からの日本語教育に関する質問には原則としてお答えしま せん。

 その理由は、従来これに該当する方の質問は、日本語教育に対する認識がおしなべて皮相的かつ浅薄なものでしかないことが多く、こちらが誠意をもって丁寧に説明 したことによって、その厳しさをようやく認識し、結果として日本語教師の道を断念され、その後に発展性のあるような価値ある対話には決して至らない、そう いうケースがほとんどであったからです。
 そのような方々に私がお話しする内容は、日本語教育関連科目の講義ではセメスターの最初の1ヶ月でお話しするような基本のお話であり、インターネッ ト上でも満ちあふれていたり、日本語教育関連の雑誌等に掲載されていたりするような事柄です。
 私の講義を受講されている学生が、説明不足等のために講義の内容に対する理解が十分に行き届かなかったような場合や、講義でお話しする以上の深化を求めて探究してこられた場合などは、私は常に喜んで質問に応じていま す。しかし、講義で多くの学生にお話ししている内容以下のレベルのことをわざわざ個人面談で聞こうとしてこられる他学部の学生の求めには、基本的にご辞退すべきであると、現在は考えています。
 例えば、自分の個人的事情でやむなく講義を欠席した学生が、その欠席した回の講義の内容を聞かせてほしいと質問されても、当然お断りします。本人の事情で講義に出席できなかった学生に対して、きちんと出席している学生に対する以上のマンツーマンの個人講義をすることは公平性の原理から言っても矛盾が生じます。それと同様に、日本語教育関連の講義を受けていない方に対して、まじめに日本語教育を探究している日本語日本文学専修の学生以上のマンツーマンの個人講義を行うことは、公平性の観点からも効率性の観点からも、全く非合理的であると言わざるを得ず、限られた時間の中でいかに大勢の学生に必要な内容を提供し、必要な対話を行っていくかを真剣に考える立場から言えば、そのような質問に応じることは本来避けるべきであると考えています。

 私のもとには、授業を離れた学生生活全般、寮生活、クラブ活動、メンタル・ヘルスなどに関連する内容でも多くの相談があります。そうした相談のために、 日文以外の学生を含めて、毎日のように頻繁に面談をしております。そうした内容はいずれも、講義のような多人数教育ではわからない個人の内面にかかわる問題が関わっているケースが多く、ある意味では授業関連の質問以上に、個人面談の必要性を感じておりますし、そういう内容の相談相手としていただけることは、人間として光栄なことだとさえ思っております。そのため、そうした相談への対応については、私自身のスケジュール管理のうえで高い優先順位を与えており ます。限られた時間の中で少しでも有意義なかたちで、また少しでも多くの学生のお話を聞いていくには、どうしてもそうした個人面談を行う必然性の高いものを優先せざるを得ないのです。

 当サイトにこのページ及び「どうすれば日本語教育になれるか」を伝言版に置いたのも、いい意味で個人面談の効率化を図るため、経験上多かった質問に対する 参考に少しでもなればと、「日本語教育入門」の前半の講義でお話しする内容の一部をまとめて掲載したものです。日本語教育に関心を持つ学生を増やそうとか、呼びかけていこうという趣旨ではありません。むしろその逆です。
 上記に「他学部生が本格的な日本語教師を目指すならば文学部に転学部する以外にありません。」と記していますが、これも決して他学部から文学部に来てほしいと要望し、募集しているのではありません。
 第一には、講義で理解できるレベルのことは個人面談ではなく講義で理解してほしいという意味です。事実、これまでの経験上、同じ日本語教育関連の質 問でも、日本語メジャーの学生からの質問と他学部の学生からの質問とでは、認識の度合いに天地雲泥ほどの歴然たる差があります。それほど講義を受けているかどうかの差は大きいのです。実際に転学部するかどうか迷っていて、その判断材料として初歩的段階の知識が得たいということであれば、私の講義についてはどうぞ自由に聴講していただいてかまいません(他の教員については個々にご確認ください)。講義時間内での質問はいかなる質問も歓迎いたします。
 また、それ以上に、そこまでの明確な意思があるなら、日本語教師を目指すことに学業の大半を費やすべきであり、卒業年度を遅らせてでも、日本語教育関連科目を履修してしっかり学ぼうとする、その強い意思と姿勢を示して もらいたいと言うのが偽らざる心境です。

 繰り返しになりますが、私は日本語教師になろうとする意思のない学生にその意思を持たせようと考えることは、今までもこれからもありません。私のゼミからは既に多くの日本語教師が育 ち、世界で活躍しておりますが、私の方から説得して日本語教師に関心を向けさせた学生は一人もおりません。いずれも本人たちが自発的に、自身の胸中に強い目的観とそれを達成せんとする強い意思を赤々と燃やしており、彼らの強い情熱に応えて、その理想を実現するためのお手伝いを、私も一生懸命にさせていただいてきたのです。
 しかし、他専修の学生が、「日本語教師も悪くないかなぁと思っているのですが、日本語教師の魅力は何ですか。ぜひ教えて下さい」と尋ねて来たことが何度かありました。私はきっぱりと「今、日本語教師に魅力を感じていないあなたに、 私から魅力を伝える気は毛頭ありません。日本語教師ほど厳しい職業はない。軽々にお勧めすることは却って無慈悲な行為だと思っています。周囲の誰もが反対し、私も反対し、それでも自分は日本語教師になりたいという学生に対して、そこまで言うなら少しでもお役に立ちたいと、精一杯お手伝いをさせていただいているのです。日本語教師を目指すことは、それほどの強い意思と、能動的で絶対的な目的観・探究心を必要とするのです。今その意思がないあなたには、日本語教育をお奨めできません。今すぐきっぱり諦めなさい」とお話ししてお引き取り頂いています。

 また、これまでの経験上、そうした他専修の学生の質問は、私の講義を受講している日本語メジャーの学生ならほとんどの場合、答えられるような内容のものばかりですので、お知り合いに日本語メジャーの学生がいたら一度聞いてみてください。

 該当の方におかれましては、以上の趣旨にご理解いただけますよう、どうかどうか、ご協力をお願い申し上げます。

2006.4.25  
更新2015.11.25
 


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