1 甲状腺検査結果の記述からは何もわからない
平成
26年6月30付「甲状腺検査」結果概要暫定版の表5では、悪性104人のうち問診票の結果を通知された43人の実効線量(放射線の人体影響を評価する量)の推定値が示さ
れている(提出は57人)。その平均値を求めると、0.78mSv(ミリシーベルト)になる。この値が何を意味するのかは不明である。理由としては、次の
ようなものがあげられる。
・実効線量を計算するために用いた放射性ヨウ素のデータと推定の仕方が不明であること。
・悪性でない受診者の実効線量が示されてないこと。
・甲状腺等価線量(甲状腺への被曝線量)に言及していないこと。
2 ヨウ素131(131I)の以外の放射性物質について
平成23年6月に経済産業省から報告書「福島第一原子力発電所事故に係る1号機、2号機及び3号機の炉心の状態に関する評価について」が公表された。
http://www.meti.go.jp/press/2011/06/20110606008/20110606008.html
131Iとその同位体の放出量(1~3号機合計)を表1に示す。
132Teは崩壊して
131I
を生じるため、表中に含めている。
135I、
132Iのように半減期の短いものもあるが、
131I
以外の合計は 1.3×10
17 Bqとなり、
131Iの放出量1.6×10
17
Bqに匹敵する量である。初期被曝はこれらの影響を考慮しなければならない。
3 放射性ヨウ素に関する公開資料から
ここでは2つの資料を示す。
図1:新たに開発した航空機モニタリング解析手法を用いて福島第一原子力発電所事故により放出されたヨウ素131の地表面沈着量を導出-米国エネルギー省
が事故後初期に測定した結果を日米共同研究により解析-独立行政法人日本原子力研究開発機構、平成25年6月27日
図2:早川先生作成の汚染地図(武田邦彦 引用)に定時降下物データを記入、単位は図1と同じで、Bq/m
2(MBq/km
2)。
4 これからの課題
①土壌汚染データからヨウ素131による被曝線量(甲状腺等価線量)の概数を推定する。
②ヨウ素131以外の半減期の短い放射性ヨウ素からの被曝をどう評価するか。
そのデータはどこにあるのか。
これらを追わなければならない。また、甲状腺癌患者の染色体検査が実施できるなら、その結果と①を付き合わせることで、内部被曝に関する新たな発見がな
さ れるかもしれない。
図2 宮城と福島のデータは不明 これを埋めるのが図1のデータになるかもしれない。
報告書における実効線量内訳
ヨウ素131以外の放射性ヨウ素(表1)
図1