一方、国立がんセンター の35年間の癌統計は下記より読みとれる。
http://ganjoho.jp/professional/statistics/statistics.html
結果を男女別にして図2に示す。縦軸の数値は、10万人あたりの発生数(罹患数)を示している。数値の傾向としては、
・概して男よりも女に発生数が多いこと。
・男女とも年齢とともに直線的に増加するように見えるが、縦軸は対数スケールなので、年齢とともに指数関数的に増加するこ
と(年齢とともに急増するこ と)。
が読みとれる。
図1と図2では、数値の傾向が似ていることがわかる。
図2の数値(発生数)に対し、図1の104人という数値は原発事故後に計画された検査によって出てきた数値である。検査によって出てきたのは有病
者数であり、発生数とは意味の異なる数値である。したがって、両者を直接対応させることはできない。また、検査をすれば、出てくる数値は発生数より多
くなってくる可能性もある。津田教授によると、癌の発生のような事象では平均有病期間を考慮すると有病率(有病者数)と発生率(発生数)を次の関係で
対応させることができる。
発生率≒有病率÷平均有病期間・・・・(1)
仮に平均有病期間を7年として試算した場合、病気である期間が7年間あり、スクリーニングのような検査をしたところそれが見つかったと判断している。
ここでは、平均有病期間を10年(検査期間3年+津田先生が試算された7年)と仮定し、式(1)を用いて有病者数から福島における発生数(10万人あ
たり)を求めた。結果を図3に示す。●は図2の全国男女平均値、青の曲
線はその最適曲線(指数関数)を示す。▲は福島の男女平均値である。赤の曲線はその最適
曲線(指数関数)である。横軸の年齢は、全国平均では図2の平均年齢、福島では検査時の年齢に近い値である。
全国に対する福 島の比率 はかなり高いことが伺われる。男女別に比率をを出して、それをポワッソン検定にかけ
た。結果 は次のようになった。
・3~13歳の男子、3~8歳の女子では発生がないため統計的な有意差は出ない。
・14~21歳の男子、9~21歳の女子では、0.1%で有意差が見られた(確率が0.001より小)。
図3 全国と福島の比較
検定は、計算を進める上でのいくつかの前提や仮定を含む。しかしながら、次のことも確認した。
①検定人数を悪性104人から癌57人にした場合でも高い有意差が出る。
②有意差がなくなるには、平均有病期間に20年という異常な長さを設定しなければならない。
このようなことから、得られた結果には否定しようのない事実があるようにみえる。
まずは、このような計算結果を、それなりの 根拠のある事実として認めることが必要なのではなかろうか。
図1 福島の男女別悪性者数(疑い含む)、男36人、女68人、計104名
図2 10万人あたりの罹患率(国立がんセンターの癌統計から作成)