1 2013年度ゼミ合宿「福島研修」の経緯
福島原発事故後2年以上が経過し、福島への実地研修を模索していたところ、2013年5月の中旬、教育学研究科で担当している「心理統計学特論」の受講生 と話していて、彼女が福島県郡山市出身でお母さんが小島ひろこ公明党市議会議員ということがわかった。さっそく連絡を入れて みたところ、ゼミ合宿「福島研修」の話がどんどん進み、5月29日(水)のゼミで夏期休業中に実施することを確認し、学生の都合を聞いたうえで日取りが8月 21~23日と決まった。小島市議のご紹介で宿泊もユースホステル「アトマ」に決まり、3日間のスケジュールも少ずつ決まっていった。小島市議には福島県議・ 市議と何度も打ち合わせの労を取っていただき、福島県議を中心に医大、避難所、市役所、除染現場、小学校、土湯地熱発電など、我々の研修場所を手配・調整して いただいて、夏期休業の前に研修計画が出来上がった。そして、公私ご多用の中、医大、避難所、市役所、除染現場、小学校、土湯地熱発電で迎えていただ いた方々 には有益なお話を伺うことができ、またさまざまに教えていただき、心より感謝している。また、聖教新聞社の記者の方が全行程を同行され、丹念に取材メモされて 記事にもしていただいたことに感謝している。このように、本研修はたくさんの「人の繋がり」によって実施できたことを冒頭にまずは記しておきたい。
実施日:2013年8月21日(水)~8月23日(金)の2泊3日
2.本冊子の構成について 本冊子は次のような3部立てとした。
Ⅰ.はじめに-研修の経緯・全行程の概要-
Ⅱ.報告書
Ⅲ.参考資料
報告書の構成は、現地で聞き取りを行ったテーマ(10テーマ)ごとに基本的には次のような4部立てとした。
(1)参加者と概要
参加者の職・氏名および聞き取り内容の要旨を示した。
(2)プロトコル(聞き取った内容・質疑など)
聞き取りの内容を録音したボイスレコーダおよび録画ビデオから文章を起こしたものを示した。担当者のお話や説明の内容、質疑などが含まれている“事実記 録”である。挿入した写真は参加者が撮ったものを用いているが、一部ホームページから引用・転載したものがある。プロトコルは2人の学生が担当している。執筆 者2名のの学生うち、1名が起こして文章化し、もう1名がその文面を点検している。
(3)感想
プロトコル作成者(文章化した学生)の感想を示した。短い文章ながら、学生の“思い”が記されている。
(4)教員から
筆者(桐山)が作った“まとめ”を示した。
(5)資料
訪問した現地でいただいた冊子資料やプリント類、レジュメなどから、プロトコルを作るのに必要な部分を厳選・抜粋して作成した。
3.本冊子の活用について
本研修は、福島原発事故後ほぼ2年5か月後の8月21日~23日にかけて実施された。したがって、現地における聞き取りは2年5か月後の記録というにふさわ しい内容である。研修といっても、現地に行ってくるだけでは、そのとき鮮烈に感じた内容であってもそのうちに忘れてしまうのが人間である。そこで、記録を残す ということが大切になってくる。学生たちは、聞き取りを録音したボイスレコーダや録画ビデオから文章を丹念に起こした。参加者がこれを読めば、説明を受けたり 観察したりしたことが鮮明に思い起こされるだろう。現地の担当者の説明の後で学生がしている質問を読んでほしい。いい質問をしている。現地におけるご苦労を思 いやり、地域再生への願いと優しさを心に抱いているためであると思われる。また、文章を作成した学生の感想も見事なものである。ある学生が記している。 「・・・施設を実際に見学させていただき、技術というものが人々の生活を支えていることを身をもって認識するとともに、技術に対する期待やその責任の大きさを 強く感じた。・・・」 この文言は短いながら重い実感に満ちている。他にも知的で感性のするどい感想や思いやりの深い感想が随所に見られたことが、本研修の教育的成功を雄弁に物語っ ていると考えられる。この冊子をはじめて読んだ場合にも、現地に行って説明を受けている臨場感が感じられるのではなかろうか。原発事故はとてつもなく深刻なも のであるが、人の記憶からどんどん消えていってしまうのではなかろうかと危惧される。その意味でも、本冊子が一つの証言集としての価値を持つものと確信してい る。そして、福島の真実を知ってもらうためのよき教材となることを願っている。学校の理科教育、社会科教育の学習資料としても使っていただけたら望外の喜びで ある。
創価教育学会(2014年1月30日(木))で、本冊子の内容に沿った次の発表がありました(11時30分ころ、場所は創価大学B棟 401教室)。