文化芸術大国キューバ
1995年、96年と二度、SGI青年キューバ訪問団の一員として彼の国を訪れた。芸術学院学生による合唱・演奏、現代舞踊やバレエ団の公演等々、キューバ芸術のレベルの高さは想像をはるかに超えていた。
同国は、文化芸術の才能を幼少のうちに発掘し、その育成・支援のために国家事業として投資している。
こうした事業は、人間に対する国民の感性をも自然と啓発しているようだ。犯罪発生率が低いことや、市民が「人間の尊厳」という言葉を口にする意識の高さにも驚いた。
貴国の政策を支える理念は何かとの私たちの質問に対し、ハルト文化大臣(当時)は胸を張ってこう答えた。「それは、キューバ独立の英雄ホセ・マルティから受け継いだ精神的遺産の表現そのものなのです」と。
マルティは革命家であると同時に詩人でもあった。彼は植民地支配のもとに虐げられた人々の魂の尊厳を、詩作や弁舌を通じて周辺諸国の人々の心に訴え、革命への支援を取り付けた。
マルティ研究所長ヴィティエール博士は池田名誉会長との対談で詩人の言葉を引用した。「芸術とは(表現対象に)真の敬意を払わずしては成り立たない、ひとつの形式である」と。
まさに人は文化芸術を通じて、他者や自然を尊いと感じる心を涵養するのである。
我が経済大国日本で、”心の荒れ”を思わせる犯罪が急増している。文化芸術大国キューバに追いつきたいと念願するものである。
(『聖教新聞』2001.8.12付 コラム「智剣」より)
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