創大生に「創造的人間」の萌芽を見る

学生部長 山岡政紀(YAMAOKA Masaki

 

 創価大学には、教員・職員・学生の三者が共に協力し合って大学建設に取り組んでいくというよき伝統がある。開学2年目には、大学運営の基本方針に学生が参加していくための機構として全学協議会が発足していることは、『新・人間革命』「創価大学の章」に創立者が記してくださっている。

 私自身、この四月に学生部長を拝命して最も強く実感することは、この学生参加の原則が大学の隅々にまで浸透しているということだ。

 

例えば入学式一つを取ってみても、第3回入学式以来、学生による入学式実行委員会が準備に当たるのが伝統となっている。新入生を真心で歓迎したい、また、創立者をお迎えして新入生との出会いを実現したい、との熱い思いから、実行委員の学生たちは春休みを返上して準備に当たる。式典運営、キャンパス内の設営、新入生への記念品準備、同時中継会場の運営、新入生歓迎フェスティバルの企画・運営、創立者をお迎えするための招待状や学生歌歌詞カードの作成など、入学式運営の多くの部分を学生による実行委員会が担い、見事にその役目を果たす。

 

男女学寮においても、寮長・副寮長をはじめとする上級生の寮役員・残寮生が、親元を離れて上京した新入寮生の親代わりとなってさまざまな面倒を見てくれる。4月第2週には学内で複数の学生が下痢嘔吐の症状を訴え、感染症の疑いが報告される騒ぎがあった。もしも感染症であるとすれば、その拡大が最も懸念されるのが共同生活の場である寮である。しかし、その際の寮役員の対応は見事で、@念入りな手洗い・うがいの励行を全寮内に徹底、A寮役員が寮内を見回り、体調の悪い学生がいないかチェック、B体調の悪い学生は直ちに保健センター・病院に連れて行き、帰寮後は隔離部屋に移動、Cすべてのトイレで体調の悪い者が専用で使う便器を一つずつ決める、などの措置を講じてくれた。幸い、彼らの迅速で的確な対応が功を奏したのか、それ以降、感染の拡がりはほとんどなく、あっという間に事態は沈静化した。私は寮役員・残寮生の貢献に心から感謝している。

 

海外からのさまざまな賓客が本学を訪れる際も、教職員の代表とともに学生が真心の歓迎で出迎えるのが伝統となっている。今年度も4月からのわずか約1ヶ月のあいだに、ロシア、アメリカ、香港、台湾、中国、豪州、デンマーク、ブラジルなどの各地域から、連日、来学者が訪れている。そのたびに、それぞれの地域と関わりの深いクラブのメンバーを中心とした学生たちが、時には日頃鍛錬している語学力を駆使して歓迎の言葉を述べ、時には民族衣装を身にまとい、民族舞踊を舞いながら異文化への畏敬の心を表現する。来学者の方々は、創価大学を訪れた最大の印象として、創大生の豊かな語学力、眼の輝き、そして友好の真心に出会った感動を挙げられることが多い。

5月3日には、ジャズの世界的巨匠であるハービー・ハンコック氏が来学し、本学より名誉博士号が授与された。その際、学生のクラブであるプリンス・マーシー・ジャズ・オーケストラの有志が、ハンコック氏の青春時代の珠玉の作品を発掘して演奏し、氏が全身で喜びを表現して賛辞を送るという感動の一幕もあった。

 

このように素晴らしい学生たちの姿に触れるたびに、創大生は、その心の強さ、清らかさにおいて既に世界一であることを確信する。創立者は建学の精神に「人間教育の最高学府たれ」と謳われているが、まさにこの創立者の心に呼応して、学生たちが自らの手で築き上げてきた人間教育の伝統が、まさに完成しつつあることを実感する。

 

学生は単に心が清らかなだけではない。世界平和に貢献したい、恵まれない人たちの力になりたい、との崇高な目的観のもと、真剣な研鑽への意識も非常に高いと感じる。

先日、経済学部のインタナショナル・プログラムの学生が私のもとを訪れ、一つのプランを披露してくれた。彼は、創大生どうしが日常のコミュニケーションのなかで英語を違和感なく使えるような気風を作るため、出会ったらいつでも英語で会話するコミュニティを作ってメンバーを増やして行きたい、との構想を語ってくれた。

また、ある工学部環境共生工学科の学生は、学生どうしで環境問題に対する意識を啓発しあい、マイ箸運動のようにささやかであっても具体的な運動を拡げていきたい、との抱負を語ってくれた。

 

語学や理論を教えるのは確かに我々教員だが、彼らが示してくれたような学生自身の自発的で能動的な取り組みこそが、真の能力を開発し、大学内に相互啓発の豊かな文化を築き上げていくのだろう。この創大生の自発能動の姿こそ、かつて創立者が示してくださった「創造的人間」の萌芽そのものであり、今後、創立者の偉業を継承して21世紀の世界を乱舞しゆくことは間違いない。

創価大学がこの豊かな可能性を秘めた学生たちを真に有為な人材として社会に送り出していくためには、我々教員が学生以上に強い情熱を持って学び、より高度な教育を提供するための不断の努力を重ねていくことこそが、今求められている、そう思えてならない。

 

 『学光』第33巻第4号(2008年7月号、創価大学通信教育部)「キャンパス通信 21st 」より 2008.7.1


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