10巻から成る注目の講座の第1巻にふさわしく、宗教と科学について論じる際に本質的につきまとうカテゴリーの異同に対して鋭い目が向けられた書である。
とりわけ河合氏による序論は、宗教と科学の接点について、従来の科学側からの見解ではなく、中立の立場から対等に論じており興味深い。科学はテクノロジーを通してその有効性を示したが、自分と自分を取り巻く現象の関わりの意味は、それによってはどうしてもクリアできない「神話の知」であり、そこに宗教が人間にとって必然である理由があるとしている。
また、村上陽一郎氏は、近代科学が人間(の心)を記述する語彙を排除することで成立したことを通して、宗教の語彙が実は人間(の心)を記述する言葉に満ちていることを改めて振り返る。
その他、カトリック、プロテスタント、仏教徒など、各高等宗教がどのように科学と関わってきたかが概観されており、科学者にぜひ一読してもらいたい一書だ。