1989年日本中を震撼させた、幼女連続殺人事件を題材とする本は、今や書店に溢れているが、本書は、異常・犯罪心理に一家言を持つ三氏による対談であり、欲望論、さらに人間論へと発展する興味深い一書である。
岸田氏によると、人間の性行動は肉体的衝動によってのみ起こるのではなく、自我の安定(自分とは何かという物語)を求めることによる。そもそも人間は、正常人でさえ、妄想に基づいて自我を構成する不安定な存在であり、倒錯した性行動とは、最後まで安定が得られず、エスカレートしていったものだという。
また、多くの犯罪者の精神鑑定を手掛けた福島氏の発言も興味深い。例えば、生と死の関係と、セックスを似たものと考え、日常は越えられない死との境界を性交の瞬間越えてしまうとし、倒錯した性衝動が殺人へと到るプロセスを論じている。
本書を通じて三氏の意見は概ね一致するが、それは同時に読者の内省にも共感を喚起するであろう。