山岡政紀 書評集No.19


『神道と日本人──いいかげんな神々がつくった二千年の行動原理』 豊田有恒著/文芸春秋刊/19881031日発行/定価1200

 良きにつけ悪しきにつけ、日本文化を形成する精神的な背景は多神教である神道だという。そもそも神道には自らを絶対と考えて他を排斥するような思想がない。そのため布教という概念がなく、およそ責任感、使命感といったものとは無縁で、信者の側の都合で信ずる神をいつでも換えられ、引き止められることもない。複数の宗教を同時に信仰する日本人の無節操さがよく指摘されるが、それも神道的精神の反映だという。神道のために殉じた者がないのも、象徴的である。戦争の正当化に利用された国家神道に関しても、本来の神道の精神性は現世的な死に対する美意識として観察できるのみで、神に殉じるという宗教的精神は本来なかったと断じている。他に、自然の一切に畏怖を抱く日本人の自然観も多神教的精神だし、欧米の技術の輸入を促進したのも、いいかげんさからくる自信の無さに支えられている、など、独特でありながら結構説得力のある日本文化論である。


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