山岡政紀 書評集


『日本語語用論のしくみ』 (シリーズ日本語のしくみを探る6)町田健編・加藤重広著/研究社刊/2004720日発行/定価2400

 本書前半部ではグライスや関連性など、語用論の主要な理論の基本原理を平易なことばで解説しているが、特筆すべきは、そうした哲学からの流れを汲む諸理論がもつ普遍性を的確に示し得ている点である。ポライトネスなど社会制度の多様性を考慮すべき理論も、その原理自体は普遍的であり、前半部に限れば書名の「日本語」は不要とさえ思える。
 言語学者にとっての語用論は、往々にして統語論の規則外現象を枠外に追いやるためのゴミ箱のようであり、非論理的で依存的だが、哲学者にとっての語用論は、統語論とは違った意味で論理的で、かつ自立的である。前半部で語用論の実像を示すことに成功しているのは、言語学者である著者が敢えて哲学者側の視点に立脚しているからであろう。
 指示詞や終助詞など日本語固有の語用論的問題を論じた後半部も、それ自体興味深いが、議論の対象となる言語現象がさらに豊富に存在することを示唆するものでもある。

(『月刊言語』第33巻第12号(通巻401号)〔言語圏α〕、大修館書店より)


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