学生からの質問に答える宮本輝氏
6月7日(木)、作家の宮本輝氏が来学し、文学部の「人間学」授業(S201教室) で特別講演を行いました。ほぼ満席の教室では、約450名の受講する学生たちが、太宰治賞や芥川龍之介賞、吉川英治賞、司馬遼太郎賞を受賞し、日本を代表 する著名作家の話に真剣に耳を傾けていました。講演後には8名の学生からの質問に一つ一つ丁寧に答えてもらい、勇気と感動、勉学への意欲漲る講演となりま した。
講演のテーマは「文学を生む力」。宮本氏が創作活動の中で作品を生み出していくプロセスを語りつつ、どんなに行き詰まっても歩みを止めずに前進し続けて いくとき、必ず道が開いていくこと、また、無駄な遠回りと思えたことがあとになって必ず意味が出てくることなど、学生の未来に対する励ましと示唆に富んだ 講演となりました。その中で、「(小説は)1000枚の原稿を読むのも大変だが、書くのも大変」と、文章を書くことの苦労や喜びなどを述べました。また 「大切なことは、忍耐、諦めないこと、一字一字を積み上げていくこと」とし、「少しずつ進むことで見えてくるものがある」「書き手がどんな思想、哲学を 持っているか。その原点に戻り、もう一度、解体して組み立てる」など、具体的な話に学生たちは聞き入っていました。講演後、「宮本氏の好きな文体は?」と の学生の質問には、「『平家物語』の文体にしびれます。山本周五郎の『虚空遍歴』の書き出しも絶妙。井上靖の『あすなろ物語』は家の押し入れの中で読み、 『比良のシャクナゲ』で文学にのめり込んだ。叙情的な中に、怜悧さ、厳しさがある。文体は作るものではなく、井上氏の生き方ではないか」と語りました。
<学生の声>
「講義を受けるにあたって『骸骨ビルの庭』を読み、とても感動した。なぜならば、今までに、宮本氏の作品のような、現実の人間を描かれた作品を読んだこと がなかったからである。今までに読んだ本のほとんどが、多少なりとも美化された人間を描く小説であっただけに、宮本氏の作品に感銘を覚えた」(1年、中川 正樹さん)
「宮本氏はなぜこんなに泥臭い人間を描こうとされるのか疑問でしたが、最後に学生の質問への答えで、本当の人間を書こうとすると、泥臭くならざるをえな い、という返答に、なるほどと感じました。どんなに幸せそうな家庭に見えても、必ず、実際に何かしらの苦労や問題、困難を抱えていると。本当にそうだろう な、と感じました」(1年、真柄麻穂さん)
「宮本輝さんの話はとてもわかりやすく、ユーモアもあって、あっという間の90分でした。父も宮本さんのファンで講演が聴けるのはうらやましいと言われました。私も今日の講演を聴いて本当に創大文学部に入ってよかったと思いました」(1年、女子)