創価大学の教育を真の世界一とするために

学生部長 山岡政紀

 

 本年1月初頭に、創価大学に進学予定の創価学園生の代表と懇談する機会があった。質疑応答の機会を設けたところ、一人の男子生徒が「創価大学は何をもって世界一の大学だと言えるのでしょうか」との質問をした。私はまず彼らに「創価大学を選んでくれてありがとう」と前置きをして語りかけることにした。

 

東大、京大にも合格できる水準の優秀な学園生が、毎年推薦入学で創価大学の門を叩く。彼らは本学を世界一の大学だと信じるからこそ、人生を左右する大学進学において本学への進学を選択したのである。いわゆる入試の偏差値において本学がどのぐらいの水準かなどということは、彼らは百も承知である。大学の真価をそこに求めなかった彼らにまず敬意を払わねばならない。その尊い彼らに対して、我々創大教員は胸を張って「本学は世界一である」と言えなければならない。そうでなければ大きな希望と理想を抱いて本学の門を叩く彼らに対して失礼である。

 私は、回答の本題を「本学は世界一の創立者が創立されたという一点において、世界一の人間教育の学府です」と始めた。世界のあらゆる民族と文化に対して深い敬意を持ち、対立する諸地域間を公平な姿勢で仲裁する民間外交を展開され、世界平和への尊い貢献に人生を捧げてこられた創立者池田大作先生には今や世界の250を超える大学から名誉学術称号が贈られている。池田先生がその偉業を継承しゆく人材を育成するために創立されたという一点で、本学は世界一の原点を持っている。

 

 その建学の原点の崇高さを、具体的な姿として示してきたのは学生であった。私は次のように述べた。「学生がその建学の精神を実現しようとする意識の高さ、内発的で創造的な学生のエネルギーに現れ、それは間違いなく世界一の域に達している」と。具体的事例として、いわゆる「創価ホスピタリティ」を挙げた。海外からの来客を歓迎する学生の友好の真心あふれる振る舞い、笑顔、堪能な語学力――どれも輝いている。来賓が創大訪問で最も感激したシーンとして創大生との出会いを挙げるのは、決してお世辞ではない。

 このような高い精神性が、世界平和に貢献し得る真の逸材の輩出をもたらしたときにはじめて、創価大学が名実ともに世界一と認められる時代が来る。これから創大生となる諸君こそがその主体者であり、証明者であってもらいたいと激励して私は話を結んだ。

 

 だが正直に言えば、彼らが本当に聞きたかったことはその先のことではなかったかと思う。すなわち、「創価大学は、世界一の創立者に応えようとする学生の創造的エネルギーを、真に世界平和に貢献しゆくための能力開発へと結びつけるカリキュラムとして具現化し、実行に移しているのか」という問いである。

 

開学以来、草創の先輩たちの大学建設に向かう創造力は、滝山祭や創大祭などの大学行事、さまざまなクラブ活動など、いわゆる課外活動を通じて発現されることが多かった。これは、創立者との出会いによって薫陶され、顕在化した学生の内在的エネルギーが、友情と連帯をもって発現できる場がそうした課外活動以外に見出されなかったからではないだろうか。これらの活動によって啓発された豊かな精神性それ自体は、社会のどの分野にあっても原点を見失うことなく、常に庶民の側に立って行動する卒業生たちの心の支えとなっており、そのこと自体は決して軽視してはならないというのが私の持論である。

 

もちろん、そうした創造のエネルギーを学業に向けた先輩たちは草創期にもいたが、それも本学の教育システムが育てたと言うよりは、個人の自覚と努力による面が強く、それゆえ光の当たらない地道な取り組みであった。ある方は、渡米して一流の大学院でPh.D.を取得し、学術界をリードする活躍をしている。また、ある方は中国(ロシア)への留学を契機に、専攻のない中でその言語をマスターし、日本と各国の交流を支える人材として活躍している。当時、地味だったその苦闘は今や実力となって光り輝いている。

 

そして、創価大学の第二幕は、こうした創大生の創造的エネルギーをもっと大きく太い人材の流れにしていく教育システムを示さなくてはならない。学生同士が励まし合い、競い合い、束になって自分たちの力を高めていくような、そういう教育システムである。

 

その意味で、創価大学の第二幕において既に成果を挙げている教育システムの先行事例として、@経済学部インターナショナル・プログラム(IP)A文学部デュアルディグリー・コース(DD)Bキャリアセンターを中心とするキャリア教育の充実、などを挙げることができる。IPでもDDでも、高いレベルの教育が学生自身の切磋琢磨に支えられて行われている。経済学理論同好会による経済学検定3期連続日本一の快挙も、IPから発展したものであり、高いレベルの学生がしかも互いに教え合う新たな文化の所産と言えるだろう。北京語言大学との提携によるDDにおいても、高い水準の中国語教育が実現している。本年4月に山本学長が発表した2009年度の教育ビジョンでは、来年度にオナーズ・プログラム(SGCP)を開設する計画が示されたが、これは全学的規模で高水準の語学力、情報処理能力等の育成を図る教育プログラムとして注目される。

前の二例が優秀層の学生を対象としているのに対し、キャリア教育は、全創大生の学業の成果を社会での活躍に結びつけていくための重要な教育活動である。就職を勝ち取った4年生によるリクルート・サポートスタッフ(RSS)、キャリア・サポートスタッフ(CSS)による啓発活動も目覚ましく、創大生のキャリア意識は全体として向上している。

 

今後さらに、基礎ゼミ、アカデミック・アドバイザー、学生ポートフォリオの全学的導入によって、全学生を対象としたきめ細かい教養教育の形が整いつつある。こうした新しい教育システムの中でも、学生自身の創造的エネルギーが適切に方向づけられていくことが期待されている。基礎ゼミでは、既に学業の実績のある上級生がその経験を踏まえて一年次生をサポートする基礎ゼミSAの体制が整えば、RSS、CSS、ワールド会等に次ぐ、ピア・エデュケーションの新たなスタイルが確立されるのではないかと私は期待している。

 

我々教職員の責務は、学生の豊かな創造的エネルギーが行事やクラブに向けられることをネガティブに制限することでは決してなく、そうしたエネルギーを社会に有為な実力へと昇華させ、目に見える形で具現化し、世界へと送り出していく道筋をポジティブに示すことではないだろうか。その道の先に、豊かな精神性を堂々たる実力に昇華して真の世界一の実証を示しゆく創大生たちの雄々しき群像があることを確信してやまない。

 

 『学光』第34巻第2号(20095月号、創価大学通信教育部)「キャンパス通信 21st 」より 2009.5.1


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