創価大学のFD活動(1)大学教員の教育力をどう高めるか

山岡政紀


創価大学はFD活動が盛んな大学の一つです。それは教員たちが教育に熱心であることの一つの表れでもあります。

FDというのはファカルティー・ディヴェロップメントの略で、大学教員が教育能力を向上させるための諸活動のことです。教員同士が互いの授業を見学してコメントし合うこともFD活動の一つですし、教育方法に関する専門家のセミナーや研修を受講して自身の授業をよくしようと努力するのもFD活動です。

大学教員には高校までの教員のような免許制度もなく、教育実習もありません。研究業績だけを審査して採用が決まります。つまり、研究者としての評価によって大学教員になるわけですから、教育者としての技量は未知数であり、本人次第ということになります。だから、学生のレベルを全く考慮せずに一方的に難解な理論をまくし立てて一人旅をする教授、板書が系統立っておらずノートテイクの役に立たないような教授、といった光景はかつてどの大学でも当たり前のように見られたわけです。しかし、今の時代は大学が教育力で淘汰される時代ですから、そんなことは言っておれなくなりました。

FD活動の最先進国はアメリカです。アメリカは教育の質保証に対する意識が非常に高く、そのことと大学教員の任期制とがうまくリンクし、教育力の乏しい教授が自ずと淘汰されるような仕組みになっています。日本にもアメリカ式の様々な先進的取り組みが入ってきています。いいことは大いに見習うべきです。

その大きな流れの一つがアクティブ・ラーニング(能動的学習)です。本来、学習というのは能動的であるべきものですが、従来型の大学の講義というのは大教室での一対多の一方的講義という形態でしたから、学生にパッシブ・ラーニング(受動的学習)を強いていました。しかし今は、講義の中でも学生が能動的・主体的にアイデアを出したり、討議したり、自分で何かを調べたり、といった活動ができるような方法や考え方が積極的に取り入れられるようになりました。

私自身、5年前にある同僚教授の講義を見学した際に取り入れていたグループ・ディスカッションの方式を、さっそく見学直後から自分の講義に取り入れ、今も実践しています。

創価大学はこのアクティブ・ラーニングに関するFD活動が先進的で意欲的であることが文科省からの評価を受け、昨年、「大学教育再生加速プログラム」(AP)の採択を受けました。申請250校のうちの採択46校という20%を切る採択率の中での採択でした。

さて、やっと本題です。今日はこのAP事業の一環としてのFDフォーラムが学内で開催されたのです。内容は愛媛大学学長特別補佐の小林直人教授による「組織的な教員の能力開発」とのテーマの講演でした。愛媛大学では教員の教育力を個人の意識に委ねることなく、組織の意思として実行せざるを得なくなるような重層的な組織機構を構築されていることに感銘を受けました。

特に印象的だったのは、新任教員に100時間の研修を課し、それがテニュア・トラック制度の一環を形成していること。もう一つはいわゆる3ポリシーとは別に「PDポリシー」(Professional Development Policy)を策定し、すべての教員が「教育」「研究」「管理運営」の各領域に関わる能力を向上させていくということを明確に掲げ、教員の意識啓発を行っていることでした。

今年は私が所属する文学部もAP事業の実践対象学部として集中的な研修を受けているところですので、積極的に学ぼうと、時間をやり繰りしてFDフォーラムに参加したわけです。(つづく)

 

2015.11.6


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