長春工業大学・創価大学新世紀シンポジウムに寄せて

学生部長 山岡政紀

 

 1974年の創立者池田大作先生の初訪中、そして、周恩来総理との歴史的会見より、本年は35周年の佳節を迎えました。この時に、創立者の愛弟子たる創大生有志が、中国・長春工業大学の同志と共にその歴史的意義を学び、深め、そして継承しゆくことを目的として本シンポジウムを開催されますことは、未来に向けてどれほど偉大な価値があることかと、心からお慶び申し上げます。池田先生が中日国交正常化への勇気ある提言を発表されたのは、それに遡る1968年。以来、初訪中までの6年間は、国と国との不信を民衆の声が信頼へと変えた偉大な転換期となりました。世界平和に不可欠なのは、本心からの誠の友情であります。心と心の交流にこそ、軍事的対立や政治的対立を雪解けさせる力があることを、私たちの偉大な師匠である池田先生が示して下さったのです。

 

 吉林省長春市は、かつて戦時中に日本軍がでっち上げた架空国家・満州国の首都として「新京」の名を与えられた地であります。私自身、長春市の東北師範大学を一度訪れたことがあります。同市の施設も見学しました。かつて傀儡皇帝・愛新覚羅溥儀の皇宮であった同徳殿は、今なお「偽皇宮」との名称で、歴史を証言する記念館として保存されており、日本軍の蛮行を記録した写真パネルなどが展示されています。長春の方の案内でこの展示を拝見した時のことは生涯忘れることができないでしょう。

 

長春市民でこの不幸な歴史を知らない人はいません。しかし、当時の長春市の方々は、無辜の日本国民に対しては寛容の心を持ち、長春に取り残された大勢の日本人残留孤児を我が子として育てて下さいました。我々日本人はこの御恩を絶対に忘れてはならないのです。

 

そして、現代の長春においても日本語教育が盛んで、自らの意思で積極的に日本語を学ぼうとする人が大勢います。もともとこの地に多い朝鮮族の方は、朝鮮語と北京語のバイリンガル(二言語併用)ですので、日本語が話せる人の多くは、トリリンガル(三言語併用)なのです。過去の不幸な歴史を忘れず、なおかつ、新しい友好の未来を築こうとする、勇気と寛容の長春の方々に、私たちは謙虚に学び、感謝の心で応えていかねばなりません。

 

そして、長春工業大学の先生方は、創立者池田先生の日中友好に対する貢献を高く評価され、昨年(2008)62日に名誉教授称号を授与されました。そして、創大生にとって親友とも言うべき同世代の学生の皆さんが、自発的に「創価精神研究会」を結成し、日本語で創価の精神、池田先生の哲学を学んで下さっています。何と尊く、何と有り難いことでありましょうか。

 

池田先生は、長春工業大学からの名誉教授称号授与式での謝辞の中で、「両国の青年たちが胸を張って歩みゆける『教育の世紀』の大道を、さらに真実一路、作り残していく決心であります」と述べられました。本日、創大祭を舞台に、中日の青年が距離の壁、言葉の壁などを乗り越えて心と心の交流を結ぶことは、それ自体が、師弟の偉大な継承であると確信いたします。そして、本日のシンポジウムを契機として、両大学の学生同士の交流が時と共に深く強く結ばれ、そして未来へと脈々と受け継がれていくことを心から願ってやみません。

 

 第39回創大祭 創立者訪中35周年記念シンポジウムより(当日の挨拶に若干加筆しました) 2009.10.11


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