リポソームは細胞膜モデルとして有用な脂質二重小胞です。その応用分野はドラッグデリバリーシステム(DDS)や人工細胞膜、化粧品、食品と多岐に渡っています。
また近年においては環境汚染物質の評価にリポソームを用いる試みが行われています。本研究ではリポソームと内分泌撹乱物質(EDCs)との相互作用によるEDCs検出やEDCsセンサーの構築を目的として研究を行っています。
EDCsは生体内に取り込まれることによって、その生体内で営まれている正常なホルモン作用に影響を与える外因性の物質の総称であり環境ホルモンとも呼ばれています。
当研究室では個々の化学物ではなく、ユニバーサルな観点でのEDCs検出を目的としてリポソームを利用した検出システムを開発しています。
主に核内レセプターに作用するEDCsは、細胞膜の通過、さらに疑似細胞膜であるリポソームの脂質二重膜を通過という共通特性を持っているので、これを作用メカニズムとして利用できます。このような特性を利用して我々は、EDCsの浸入により小胞構造が崩壊するリポソームを調製し、EDCsのユニバーサルな検出系確立を目的として研究しています。
リポソームに内包させた蛍光物質の漏出を測定する検出系です。EDCsによる小胞構造の崩壊から外液に蛍光物質が漏出します。この漏出によって増加する溶液全体の蛍光強度を測定します(図2)。
References
(1)“Degradation of liposome cluster caused by the interaction with endocrine disrupting chemicals”,
Y. Nakane and *I. Kubo, Colloids and Surfaces B: Biointerfaces, 66, 60-64 (2008)
(2)“Layer-by-layer of liposomes and membrane protein as a recognitionelement”,
Y. Nakane and *I. Kubo, Thin Solid Films, 518, 678-681 (2009)