生体内で合成される抗体や酵素は、特定の分子に対して特異的に相互作用するという特徴を持つことから、それらを分子認識素子へ利用したバイオセンサーの研究が盛んに行われています。

しかし、抗体や酵素もタンパク質である事から、高温、強酸、強アルカリ、有機溶媒中など、過酷な環境下では失活してしまいます。そのため、それらを利用したセンサーの構築は、使用条件が限られてしまいます。また、抗体や酵素を生物から抽出し、それを精製には長い時間がかかり高価でもあるため、汎用性のあるセンサーの開発を妨げる要因ともなっています。

　久保研究室では、これら生体分子に代わる人工抗体としてモレキュラーインプリンティングポリマー（Molecularly Imprinted Polymer : MIP）に注目しています。MIPは、鋳型と特異的に結合する構造を持つため、人工抗体とも呼ばれています。また、天然の生体分子である抗体や酵素に比べると、安価で合成法方が簡便で、化学的耐久性に富むという利点から、センサーの分子認識素子や分析装置の固定相への適用も期待されています。　MIPは分子鋳型法によって重合された、ポリマーの事です（図１）。

MIPの作り方として、最初に目的分子を鋳型にし、その鋳型と相互作用する機能性モノマーと架橋性モノマーを共存させ、重合させます。次に鋳型を除去することで、その鋳型となる目的分子が特異的に結合するサイトを持ったMIPが合成されます。

図1　モレキュラーインプリンティング(分子鋳型)法による人工レセプターの合成手順