台湾・中国文化大学からの名誉博士称号に思う

山岡政紀(YAMAOKA Masaki)

 

 

 池田大作SGI会長に授与された名誉学術称号を一覧したときに、その数の夥しさとともに耳目を驚かすことがもう一つある。それは、政治的に対立している二国間の双方の大学から名誉学術称号を授与されていることである。1996年6月8日に、アメリカ合衆国のデンバー大学から、そして同月25日にキューバのハバナ大学から、それぞれ名誉博士号を授与されたことは、大きな驚きであった。それと同時に注目したいのは、中華人民共和国(大陸)と台湾の双方からも名誉学術称号が授与されていることである。
 1968年に日中国交正常化提言を行い、その後の日中友好の機縁を作った池田会長は、同国より大きな賞賛を受け、中国の大陸の大学から(香港、マカオ地域を含む)、名誉学長1、名誉博士3、名誉教授55の計59を授与されている。
 そして、台湾の大学からも名誉博士が厳然と二つ授与されている。台北市陽明山にある中国文化大学は、池田会長への141番目の名誉学術称号として、2003年3月24日に名誉哲学博士を授与した。また、香峯子夫人には名誉法学博士号を同時に授与している。言うまでもなく、大陸と台湾という「二つの中国」は国共戦争以来の政治的対立関係にある。その中で、これまで大陸を何度も歴訪し、その賞賛を受けてきた池田会長に対し、なぜ中国文化大学は称号を贈ったのか。それに対する回答は、同大学の創立者の子息であり、現理事長である張鏡湖博士が、授与式の際に述べた授章の辞に見出すことができる。
 張理事長は、池田会長のあらゆる業績について、宗教、教育、文学、学術、芸術文化交流などの多岐にわたる項目から述べているが、その辞の中で、“中国”に関連する業績に再三言及している。第一に、創価学会の信奉する日蓮仏法について、中国の隋の時代の天台大師の教えを受け継いだものであると述べている。第二に、中国の国父と言われる孫文を称えた叙事詩「偉大なる獅子 孫中山先生に捧ぐ『永遠の革命者 民衆世紀への王道』」に対する共鳴。第三に、中国画家である常書鴻氏との対談について。第四に、「中国芸術貢献賞」が授与されていることである。
 ここで言及されている“中国”が、政治体制としての中華人民共和国でも、中華民国でもなく、「一つの中国文化」を指していることを見逃すことはできない。もちろん、あの国交正常化提言が中華人民共和国の国際的復権に寄与したことは、張理事長とて知らないことではあるまい。しかし、その提言に脈打っている、中国の悠久の歴史から日本が受けた恩恵への感謝や、七億を超える(当時)中国民族に対する共感を、張理事長は見逃さなかったのである。そこには台湾の人々の民族・文化を排除する論理は何一つ入っていない。本来それは台湾も含んだ一つの中国文化、一つの中国民族に対するものであったはずだ。
 そしてそれを見逃さなかった張博士の慧眼にも賛辞を贈りたい。国父・孫文の建国の精神を創立の理念として掲げた同大学が、その名を「中国文化大学」と標榜するのもまさに故あることであり、その精神を創立者・張基ホ博士から正しく継承している張鏡湖理事長であるがゆえに、池田会長の本質を見抜かれたものと拝する。
 提言発表の直後に、評論家・竹内好氏は「光はあったのだ」と題する文章に、「国交回復の問題を国家レベルではなく、民族レベルで、または民衆レベルで考えていること」に感銘を受けたと記している。これもまた、同じことを見抜かれた慧眼である。
 2004年3月29日には、台湾・高雄市近郊にある屏東科技大学から、154番目となる名誉農学博士号が授与されている。ここでも同大学の周昌弘学長は、人類の友好を促進し、生命の価値を創造する池田会長の豊かな業績に賛辞を贈っている。
 このように一つの中国文化に対する深い理解を寄せる池田会長の理念を手がかりとして、それを共有する両地域の人々が互いを尊重し合い、融和する日が訪れることを心から願い、また、そのことを二十一世紀の宿題として祈り、両地域に対して多大な損害をかつて与えた日本国の子孫の一人として何ができるかを、真剣に模索してまいりたいと決意している。

2006.1.8


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