言語圏α【ことばの書架】


発話機能論
                                       
山岡政紀著

  「構造の側から機能を」でなく、「機能の側から構造を見る」発話機能論である。発話機能を「文機能」(述語の語彙・形態・時制、主語の人称)と「語用論的条件」(参与者間の関係、利益、行為の実行可能性など)によって規定すること、そして、発話機能が作用する単位を、参与者間の≪要求≫と≪付与≫から成る「連」としている点が、本書の理論の大きな特徴である。

 本書における発話機能の四分類、{策動}{宣言}{演述}{表出}のうち、具体的な議論は{策動}に集中する。丹念な整理と分析に基づいて提示される文機能と語用論的条件、および授受構文と発話機能の発動の関係の分析は、洞察と示唆に富んでいる。

 {策動}以外の範疇に関しては、主張の意図をより詳しく知りたい部分もあるが、それらも含めてこの発話機能論は、語用論、文法研究、日本語教育など複数の分野からの関心を喚起し、今後の議論に向けて共通の土俵を提供するものである。(熊谷智子)

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くろしお出版・A5196頁・本体2800]

(『月刊言語』Vol.38No.22009年2月号〕大修館書店より ©熊谷智子)


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