書評集No.54


『日本語はおもしろい』  草薙裕著/199161日発行/講談社刊/定価1300


 
著者の草薙裕筑波大学教授(現・筑波女子大学長)はもともと、自然言語を機械的に処理するための形式化を専門とするコンピュータ言語学者だが、同時に外国人への日本語教育という近年需要の高い仕事にも従事している。一見無関係のこの「二足のわらじ」だが、コンピュータ泣かせの曖昧な文は確かに外国人にとっても難物であり、日本語研究に共通の問題点を示している。それらの多くは日本人自身は普段意識しておらず、客観的に記述したり、説明しようとする時にはじめて気が付くことで、最終的な解決はともかく、その問題点を知るだけでも確かに「おもしろい」。
 例えば、「一日おきに風呂に入る」と「二十四時間おきに風呂に入る」とは、明らかに意味が異なるが、すると一日と二十四時間とはイコールではないのだろうか。「ある選手に筋肉増強剤の使用が認められた」という文は正反対の二種の意味を持つ曖昧な文だが、この曖昧性のもとになっているのは何か。などなど……。ともあれ、我々は実に難しい言葉を使っているものだ。


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