山岡政紀 書評集No.49


『終わりなき世界 −90年代の論理』 柄谷行人・岩井克人著/1990111日発行/太田出版刊/定価1400


 昭和が終り、平成を迎えた1989年は世界の激動の年であった。特に本書では日米経済摩擦と東側諸国の民主化運動とを大きなテーマとして掲げ、日本人の無意識の構造がこれらの問題にいかに関わっているかについて共著者の対談により展開する。
 日米の経済摩擦の中心は何と言ってもコメである。日本のコメは神に捧げるものという象徴的な意味を持つ。この過剰な意味が主食という独特の概念を形成し、自給自足への神話となって市場解放に対する閉鎖性をもたらすという。柳田国男の稲作民族論も結果として国粋主義に至っている。部分自由化やむなしは衆目の一致するところだが、本書では単にラディカルな経済論ではなく文化論から論じる点が興味深い。
 また、現実の経済大国を支える個々の資本主義は、理論的な資本主義の正しい実践の結果ではなく、予見されない不均衡による差異がもたらしたとの逆説を論じ、社会主義の崩壊をそのまま資本主義の勝利と見ることを痛烈に批判している。 


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