山岡政紀 書評集No.13


『人工知能の未来は──AIはどこまで人間らしくなったか』ジョージ・ジョンソン著/渕一博訳/日本実業出版社刊/1988 715日発行/定価2800

 本書は情報工学を専攻する学生のための専門書ではない。人類が人工知能に対して様々な課題を解決してくれるものと期待した、その本質は何か、そして、人類が実際に得たのは何か、等、歴史上の位置づけとも言うべき社会科学的な問題が、語られている。著者がジャーナリストであるジョンソンである点も注目に値する。人工知能の量的な成果には否定的だが、質的には人間の思考に十分迫ったという意見が、より多く紹介されている。しかし、哲学的には、それは本質的ではない。知識や思考の過程をコンピューターでシミュレートすることが事実可能であったとしても、我々の自覚的意識及び記憶に基づく自我がシミュレートされていることとは質的に異なる。また、徹底的に主観的な要素、例えば言語音声の認識が人工知能にとって予想外の難問である事実は、物理的音声と主観的な音韻対立による言語音声とのレベルの違いを示し、誠に示唆的である。


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