東欧勢の不振に思う

 今回のW杯に出場した欧州15ヶ国のうち、決勝トーナメントに進出したのが9ヶ国、1次リーグで敗退したのが6ヶ国である。このこと自体、欧州のレベルの高さを示してはいるが、敗退した6ヶ国に目を向けてみると、おもしろいことに気がつく。そのうち二つは番狂わせの敗退と言われた、フランスとポルトガルである。そして、残りの4ヶ国(ロシア、ポーランド、クロアチア、スロベニア)はいずれもスラブ語派の言語を公用語とする東欧諸国なのである(出場国32ヶ国の公用語一覧参照)。

 この4ヶ国の1次リーグ12試合の成績は引き分けがなく、なんと3勝9敗である。欧州予選でもかつて強豪と言われた、ユーゴスラビア、ルーマニア、チェコ、ウクライナなどの東欧勢が敗退している。

  東西冷戦終結後の10年余が経った。東欧諸国では、民主化と共に西欧諸国との経済格差に直面した結果、国内リーグやクラブ・チームが衰退し、有能な選手は挙って西欧へと移り、国民のサッカー熱も薄らいでしまったことで、後に続くはずの有望な若い選手も育たなくなった。

 クロアチアなどは前回フランス大会では、旧ユーゴスラビア代表の生き残りが大活躍して3位を勝ち取ったものの、その後の若手が育っておらず、ほとんど4年前と変わらない布陣で今大会に臨んだ結果、1勝しかできずに敗退となった。フランス大会で得点王となったシューケルは初戦には出場したものの衰えは隠せず、残りの2試合では起用されなかった。

 スロベニアはユーゴスラビアからの分離独立後、初出場を勝ち取った。スロベニアという名の国が厳然と存在することを世界に示すチャンスだったが、結果は3戦全敗だった。初戦のスペイン戦では、つぼにはまった時の怒濤の前進がスタンドの韓国民の大声援を呼び、ホーム・ゲームのような趣となったが、実力差は埋められなかった。欧州予選では、ロシア、ユーゴスラビアといった東欧勢と同じグループ1に入り、かつて連邦を成したユーゴスラビアを勝ち点わずか1差でかわしてグループ2位。プレーオフでも同じ東欧のルーマニアを破って本大会へのキップを勝ち取ったが、運に恵まれたのもここまでだった。

  東欧サッカーと言えば、あのストイコビッチのユーゴスラビアがそうだったように、絶妙のパス回しや華麗なテクニックが魅力的だった。W杯の大陸間格差が縮まり、欧州以外のチームが強くなってくることは大歓迎だが、その陰で、東欧のような美しいサッカーが憂き目に遭い、荒々しいサッカーの勢力が台頭するという意味を包含するものではないことを祈りたい心境だ。

2002.7.9


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