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桐山ゼミ2015年度水元公園第1回調査まとめ

観光マップ

マップ引用:https://www.tokyo-park.or.jp/park/format/map041.html
 水元公 園は、東京都葛飾区水元公 園3-1、京成「金町」、JR「金町」駅より徒歩20分の位置にある。福島原発事故の影響によって、都内ホットスポットのひとつになった。我々は、その4年後の実態を調査 した。

1 調査の概要

桐山ゼミでは、水元公園の放射能調査を次のように行った。
1 調査地点
 ・第1回調査:第1駐車場より北側、2015年8月1日、4年生
 ・第2回調査:第1駐車場より南側、2015年11月22日、院生・3年生
下記の地図上で、
 ・青の丸印青の番号の場所第1回調査
 ・赤の丸印黒の番号の場所第 2回調査
を示す。第2回調査は二手に分かれ、埼玉県みさと公園側の一部についても行った。

2 調査内容
 ・空間線量率の測定(地上と1mの位置)
 ・土壌と水のサンプル採取(放射能測定、γ線スペクトル観察)

fig1


2 測定方法

空間線量率は次のように測定している。
 ①測定地点に着いたら1分待つ。
 ②1mの位置に測定器を水平にもち、30秒経過ごとに6回測定する。
 ③地上に測定器を置き(紙を敷いた上に測定器を)、1分待つ。
 ④30秒経過ごとに6回測定する。
 ⑤測定中に、周囲の情報を書き込み写真を撮る。
土壌・水採取の方法は次の通り。
 ①人が集まる場所やその近傍の土壌・水を1ℓ程度採取する。測定後は土壌・水を元の場所に戻す。
 ②念のため土壌は直接手で触れないよう採取時には注意する。
 ③土壌はまずビニール袋に入れ、それをポリボックスに入れる。
 ④水はペットボトルに入れ、蓋を固く閉めてビニール袋に入れる。水に触れた場合、手をよく洗うこと。
 ⑤測定中に、周囲の情報を書き込み写真を撮る。
 ⑥ポリボックス、ペットボトルに試料の情報を記したラベルを貼る。採取した水、土壌はできるだけすみやかに測定にかけ、元の場所に戻す。

3 第1回調査結果

(1) 空間線量率
 HORIBA PA1000による6回測定の平均値と誤差(95%信頼区間)を示す。1m値 では0.20μSv/h以下、土の上では0.30μSv/h以下のレベルであった。どちらも、創価大学教職大学院 (八王子市丹木町 1-236)あたりの線量(0.07~0.08μSv/h程度)の2~4倍の値である。

fig2,1

(2) 土壌と水の放射能
 HORIBA PA1000を用いた簡易測定の結果を示す。有意差の有無は、ブランクとサンプルの差を独立2群のt検定による。水には有意差が出ず、放射能は検 出されなかった(本測定で は、あるかないかはわからなかった)。土には、1000~2000Bq/kg程度の放射能が認められた。これは、創価大 学教職大学院(八王子市丹木町 1-236)の駐車場で採取した土の値(200~300Bq/kg)の5~10倍の値である。このような土で栽培した作物には、およそ10~20Bq/kg程 度の放射能が含まれる可能性がある(移行係数0.01で見積もり)。下記の画像はNo5、6付近で、メタセコイヤの森に近い橋の下で、水辺の土壌と水を採取し た。 橋の上に4年生、筆者が土壌を採取。空間線量率では八王子とあまり変わらなくても、土壌には放射能が残っているのではないかと推測させるデータであった。

fig5'

(3) γ線スペクトルの測定
 クリアパルスA2072を用いた測定結果を示す。測定場所No23で、石のベンチに測定器を置いてγ線スペクトルを観察した。γ線スペクトルは、土壌などか ら“何の元素から出たγ線”が飛んできているのかがわかる。空間線量率は、1mSv基準の0.23μSv/hよりは低い0.173μSv/hであったが、γ線 には放射性セシウム由来の成分が認められた。記念広場での測定であるが、ここはお年寄りや家族ずれなど人も多い。石のベンチに腰掛けて休憩する人も多いのでは と思われる。

fig7'

  横軸のγ線のエネルギーが600~700keV(キロ電子ボルト)あたりに小さなピークが認められる。このピーク は、人 工放射性核種Cs(セシウム)が示す特徴的な形である。これは、土壌には4年半前に福島原発から飛んできたCsがまだ存在することを示すデータである。勤務先で同様の測定 をしても、このような明確なピークは観察されない。(150keVあたりに大きなピークをもつ山形は、自然放射線もふくむ様々なγ線のコンプトン散乱などによる影 響が積み重なった結果、あるいは光電子増倍の装 置特 有の感度からくる結果で、特定の元素によるピークではない。)こういうデータからしても、空間線量率の値だけから放射能汚染の事実を把握することはできないことが分かるだ ろう。水元公園でくつろぐ人々を見ていると、放射能に気を付けているようには見えない。福島原発事故は忘れ去られたように思える。最近は報道もほ とんどされない。しかし、土壌には放射能が飛んできた事実が残っている。風 の強い日は土が空気中に舞っているのではないかと懸念される。そんな日は、子どもにはせめてマスクをさせたいと思 う。

 

4 今後の活動

次回の調査が終わった段階で、社会還元活動として、
・HP、SNSなどによる、事実に基づく踏み越えない広報を行う。
・調査結果を葛飾区役所に持参し、参考資料にしてもらう。
 危険な個所が出た場合、立ち入らないように、触らないように 注意喚起してもらうよう(立て札など)お願いすることも考えている。