本書は、現代日本語の文構造や形容詞、動詞を文機能の観点から詳細に検討、記述したものであり、筆者が昨年春に筑波大学に提出した博士論文の改訂版である。「機能」という用語は、これまで様々な意味を含み、半ば曖昧に用いられてきたが、筆者はまず、文機能を「発話機能」(例えば、主張、約束、命令、予言、報告などの、語用論的条件を前提として成立する発話の意味と区別し、精緻な考察を通じて、思考表出、意志表出、感情表出、事実描写、状態描写、関係叙述、属性叙述などの文機能を提示する。そして、これらの機能をもとに、形容詞文、感情動詞文、叙述動詞文を各章ごとに議論し、形容詞や動詞の新たな分類も提示している。
本書は、これまでの国語学、日本語学における語彙論、モダリティ、アスペクト、格など様々な研究にも十分な注意を払い、その上で文機能による述語の分析を行なっているため、有益で説得的な内容となっている。(高見健一)
[くろしお出版・A5判304頁・本体3800円]
(『月刊言語』Vol.30No.5〔2001年4月号〕大修館書店より(C)高見健一)