バークレー日記
山岡政紀(YAMAOKA Masaki)
Apr/23/2005 海外に住むという初体験
バークレーに来て20日間が経った。
海外渡航は14度めだが、過去はいずれも短期間で、これまでの最長は99年にスペイン語語学研修の引率を行ったメキシコでの1ヶ月滞在が最も長かった。
今回のように1年間の滞在は初体験だ。1ヶ月のホテル滞在は「泊まる」という感覚だが、1年間となると、やはりアパートを借りて「住む」ということにな
る。つまり、単にその長さが12倍になったということではなく、いろいろややこしい手続きがあるのだ。
まず、何といってもアパートの契約である。慣れない地域で家賃の相場もわからない。現地を見て回る交通手段があるわけでもない。まして、言葉が慣れてい
ないことで契約の際に勘違いなどがあるとトラブルの種になる。非常に慎重にならなければならない。その点、私の場合、現地在住のSGI−USA(アメリカ
創価学会)婦人部のメンバーであるアキコ・ルックさんが全面的にお手伝いをしてくださり、非常に心強かった。ここまでしていただく謂われは何もないと恐縮
の限りだったが、これも何かのご縁でしょうと言ってくださった。帰国までにどうにかしてご恩返しをしなければと思っている。
つづいて、電気・ガスの契約。アパート入居前にホテルから電話して行ったが、英語で行わなければならず、緊張した。契約上のいろいろなやり取りを経て、
ほとんど最後まで行ったのだが、最後に訊かれたことがどうしても聞き取れない。"dog"という単語が聞こえてくるが、電気・ガスと犬が関係あるとは思え
なかったので、別の単語と思い込んだ。しょうがなく、"I cannot understand what you
said."と言ったら、何語を話すのかと訊かれ、"Japanese"と応えると、しばらく待った後に、通訳が出てきて三人で話す状態となった。最初か
ら通訳を頼めば出してもらえたのかもしれない。さて、例の質問だが、「あなたのアパートの周辺にどう猛な犬がいますか」というような質問だった。日本語で
そう訊かれれば、変なことを訊くなあと思うものの、動物の犬のことだとはっきりわかる。検針に来た職員が番犬に噛みつかれたり、追い返されたようなことが
過去にあったのかもしれない。やはり、全部クリアに聞き取れないと、部分的に単語が聞き取れても結局何もわからないのに等しいということを、このとき体験
した。
つづいて、電話の契約。アメリカの電話会社SBCには日本語センターがあり、日本人にとってはありがたい。だが、不動産屋から渡された書面には日本語セ
ンターの連絡先が書いてなかったため、これまた当初は英語での契約にトライした。結局、途中で何度か聴き直したところで、やはり何語を話すのかと尋ねら
れ、日本語センターにまわされた。電話の場合、契約の種類が豊富で、細かい料金設定があるので、電気・ガス以上に英語で契約するのは難しい。
次に、ソーシャル・セキュリティ・ナンバーの取得。個人を特定するID番号だ。その管理を行うオフィスが各市内にある。アメリカで仕事をしようと思った
ら、この番号を取得していないと身分を怪しまれる。日本では「国民総背番号制」批判のようなものがあってなじまないが、アメリカでは逆にこの番号を持って
いないと不便だ。それだけの効力のあるものだけに、逆に外国人に対しては、特にあの同時多発テロ以降、なかなか発行してくれないらしい。何人かの日本人
も、あれこれと根ほり葉ほり聞かれ、取得までに時間がかかったと言っていた。だが私の場合、UCバークレーが私の身分を保証してくれた「DS−2019」
という書類が効力を発揮したらしく、わずか10分程度で取得できた。
今度は銀行口座の開設。クレディット・カードも持っているし、日本の銀行の国際キャッシュ・カードも使えるはずだから、まさかアメリカで銀行口座を開設
する必要があるとは思っていなかった。しかし、来てみてわかったが、アメリカは小切手社会で、家賃も電気代も電話代もすべて小切手で支払わなければならな
い。そのため、アメリカに「住む」以上は、小切手のための当座預金口座を開かなければならないのだ。バークレーにも銀行はたくさんあるが、私は「カリフォ
ルニア連合銀行」という銀行で口座を開設した。日本では小切手など切ったことがなかったが、今は毎日持ち歩いている。小さな買い物でも使えるし、仮に落と
したり盗まれたりしても、悪用される心配がないので、けっこう便利だ。
こういった諸手続をすべて完了させるのに、到着から20日間、アパート入居から2週間かかった。
もちろん、アパートでは家具も必要だ。まず入居初日に必要なのはベッドと寝具。そして、その後、机、食器類、調理器具などを少しずつ買いそろえた。ここ
でもSGI−USAの方々が親切に車を出して買い物につきあってくださった。また、ベッドと机は、ちょうど使っていないものがあったとのことで、無償で提
供してくださる方がいて、親切にもアパートまで運んでくださった。本当にありがたかった。
こうして、海外に「住む」という生活が本格的にスタートした。
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