山岡政紀 書評集No.8


『ニューサイエンスと東洋 橋を架ける人々』竹本忠雄・伊東俊太郎・池見酉次郎編/誠信書房刊/1987年7月10日発行/定価2200円


 ニューサイエンスと東洋思想の両者の接点を論じる本書のテーマは、全体性(ホールネス)である。
 十七世紀以来の科学が現象を要素に細分化して全体に還元したのに対し、個々の現象(自己と他者、精神と物質等も含む)のすべてにそれらを包括する全体的実在の内在を認める点が、この両者の端的な共通点である。しかし、この重大問題が科学者サイドからしか語られないのは片手落ちではなかろうか。
 例えば、ボームの暗在系にせよ、ユングの共時性にせよ、我々が通常考える物理的現象世界より高次の根源的一次的秩序を想定しなければならないが、言語における概念化は要素還元主義に適しており、科学の枠組自体が言語の制約をうけている。その中でパラダイム・シフトを徹底するためには全体との合一を自覚すべく、科学者自身が根源的秩序へ内面的に接近する必要がある。
 その意味で、科学者が対象として見る宗教と生きた人間が自ら行う宗教の質的な違いに今こそ気付くべきである。


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