山岡政紀 書評集No.73


『「ノストラダムス予言」からの決別 科学技術によって楽園の21世紀がやってくる』 越智宏倫著/1989年10月25日発行/産能大学出版部/定価1500円


 現在の世界が抱える環境問題、食糧問題、絶えない紛争、精神の荒廃等を見るにつけ、今世紀末が歴史の終末となることを予感させる。本書は、その現状を正しく把握しながらも、楽観論の立場に立つことを主張する。つまり、現状肯定の進歩主義的な楽観論ではなく、自己変革を必要と考える「改良派」であるという。
 著者が述べる自己変革とは、どうやら科学の再評価ということに帰着するようだ。新しいパラダイムの電子制御、生体制御、精神制御技術による脱工業化は、人間自身と自然環境の生命の本性を開発し、それによって環境との融合、ライフサイクルの変化をもたらし、自己実現の可能性を豊かにすることができると主張する。しかし、これらの新しい技術にも常に危険がつきまとうことを著者は知っているはずだが、敢えて楽観論を述べることで、明るい未来への自己暗示を目ろんでいる。思うに、暗示ではなくもっと強い自己の生命の制御が必要ではないだろうか。


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