山岡政紀 書評集No.66
『脳死・臓器移植を考える』 田代俊孝編著/1992年2月10日発行/同朋舎出版刊/定価1800円
同朋大学助教授である編著者を中心とする学際的研究機関「死そして生を考える研究会」が1992年1月に行ったシンポジウムの記録書。本年に入って脳死臨調の答申も出され、脳死と臓器移植をめぐる情勢は刻々展開してはいるが、本書で示されている見解は、同研究会の一貫した立場として、今後も主張され続けていくものとみたい。
中心的な主張は、仏教者の立場から、もともと日本人が持っていて忘れつつある仏教的な生への倫理観を、もう一度取り戻すべきだというものである。問題の所在として、現代社会では@生命をモノ化し、経済的価値のシステムに組み込んでしまっている、A生死の問題をタブー視し、教育現場で扱わない、B生命を自らの所有物のように考える、等の点が指摘されている。
また、収められている弁護士の報告においても、肉親の死を受容していくために必要なプロセスを重視し、そのための人権の保護が強調されるなど、脳死を死とすることに対する慎重な立場が一貫して主張されている。
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