山岡政紀 書評集No.37
『中国医学の気』 盧玉起・鄭洪新編著/堀池信夫他訳/1990年5月10日発行/谷口書店刊/定価3090円
漢代より伝わる古典的医学書である『黄帝内経』は、「気」について述べた最古の書であるが、本書ではその内容を総論として概括し、また各論として、「気」を分類ごとに整理し、それぞれに有益な解説を加えている。また、気の実体についての現代の研究成果にも言及している。
引用されている『黄帝内経』の記述は、医学書というより哲学書の感がある。「気」によって、あらゆる自然を包括する全体的世界観が構成され、その中で人間の内外を貫く「気」の流れが記述されているからである。しかも、その一つ一つが、経験を通して帰納的に得られたものであるが故に、人々が健康に生きるための実践的な方法と連続しており、そこに注目したとき『黄帝内経』は医学書と見なされるわけである。
ともあれ、どの記述をとっても、分析的にはきわめて素朴に映るにもかかわらず、それらが今なお通用するというのは、経験に対する敏感さ、自然に対する素直さのなせるわざであろうか。
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