山岡政紀 書評集No.22
『ファジィ 新しい知の展開』 中村雄二郎・菅野道夫・中沢新一・村上陽一郎他共著/1989年1月30日発行/日刊工業新聞社刊/定価1400円
ファジィとは「曖昧、ぼんやりした」といった意味の英語である。言語をはじめ人間の主観世界の中における論理構造が、実は境界線がはっきりせず、中間的なものを多く含んでおり、それを理論化しようという試みをファジィ理論という。
例えば、老人とは何歳からで、初老とは何歳くらいのことか、といった二値論理に基づく数値化を人間は日常的には行っておらず、それをファジィ集合のメンバーシップ関数という中間値を持つ曲線的関数で記述する。
近年、コンピューターにファジィ制御を行わせる技術が開発され、にわかに注目を浴びるようになったが、本書での最大の論点は、その科学史上の位置付けである。デカルト的知に支えられる近代科学技術が、曖昧を排除することを至上命令としてここまで発展してきたのに対し、ファジィは人間主観のありのままの曖昧を研究対象とする新しい知として、科学革命のかぎと、評価される。東洋宗教との類似点などにも言及している。
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