人間学はどこにあるか──は
じめに
山岡政紀(YAMAOKA Masaki)
あらゆる生物群、あらゆる動物群において、「人間」という動物はきわめて特異である。それを考察していく試みも暗中模索にならざるを得ない。しかも、
「人間」は考察の対象であると同時に、考察しようとする我々自身でもある。自らを考察するという点で、「心」の探究であった認識論、現象学、精神分析学、
心理学等と共通点を持っている。確かに、「人間」の特異性は「心」から始まっているかもしれない。しかし、それは、人間の生物としての肉体的なあり方をも
特異にしている。さらに、その特異性は人間の行動様式にまで及んでいる。それは生物学や文化人類学、民族学等の研究対象でもあろう。人間の特異性を記号の
使用に集約させて考えれば、それは記号論や言語学の勢力範囲でもある。このような学際的なそれを一つの「学」として考えていくことは難事業である。そのた
めには何を資料とし、どのように考察、検証していけばよいのか……。本稿は学術論文としてではなく、人間学を模索する一人間の覚書として、思い付くままに
綴って参りたい。
(1992.11.11)
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